イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI)
判 決
2005年3月5日
イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI)は、2004年7月17日から18日にかけて京都で、また2004年12月11日から12日、及び2005年3月5日に東京で開廷され、法廷及びこの間日本各地で開催された数多くの公聴会に提出された証拠、証言、見解を審理した。本日下される判決は、ICTI法廷を構成する韓国、インドネシア、日本の判事4名による全員一致の法廷意見である。この判決には、後に、各判事による個別意見が付される。
本法廷の被告人はジョージ・W・ブッシュ米国大統領、トニー・ブレアー英国首相、小泉純一郎日本国首相、及びグロリア・M・アロヨフィリピン大統領である。全て現職の大統領または首相だが、現在の国際法の枠組みの下では、現職の国家元首又は閣僚によって犯された犯罪といえども、2002年7月1日に発足した国際刑事裁判所(ICC)において裁くことができるものとされている。しかし、被告人たちの国籍国が、英国を除きICC規程を締結していないという事実やその他の諸事情により、被告人たちをICCで訴追する道は現実的には閉ざされているにも等しい。だが、たとえ現職の国家元首又は閣僚であっても、法、とりわけ国際法の上に立つことはできない。国際法システムの機能不全によって法の支配の実現が妨げられているならば、遵守されるべき法を明らかにし、共通の価値観と道徳的良心を共有する人類の名において行動することが、世界の市民社会の役割である。こうした趣旨で設置された民衆法廷は長い歴史を持ち、1960年代終盤のベトナム戦犯法廷(ラッセル法廷)以来、たとえばイラクに対する米国の戦争犯罪を裁いた1992年の国際戦犯法廷、2000年の女性国際戦犯法廷、2003年のアフガニスタン国際戦犯民衆法廷、そして本法廷が、世界の世論に支えられ、こうした市民社会の営みを担ってきているのである。こうした世界の世論こそ、国際法の妥当性の不可欠かつ真の基盤を構成するものである。
本判決では、ICTIを日本で開廷する意義を特に強調したい。第二次世界大戦の惨劇を経て、国際社会は国際の平和と安全を維持する主要な組織として国連を設立し、全ての国連加盟国は、国際関係において国際紛争を平和的に解決し、いかなる国家に対しても武力による威嚇もその使用もしないことを厳粛に誓った。そして日本は、侵略戦争によって国際の平和と安全を著しく乱し、数千万もの人々に言語に絶する被害を与えた国家として、1946年に日本国憲法を制定し、その中で平和国家としての基本政策を宣言したのである。日本国憲法前文は次のように宣言している。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」。憲法9条は国連憲章の原則に沿いつつ、次のように規定している。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に放棄する。」本法廷が日本で開催されることは、憲法に記されたこれらの崇高な理念に照らして、とりわけ意義深く、また現政権の政策が憲法の精神を著しく逸脱をしている時にあって、その意義はいっそう深まるものと思料される。
ICTI規程は、ICC規程と同様に、被告の公的な地位が、国家元首であれ、政府高官であれ、刑事責任を軽減するものでないことを明確にしている。こうして、本法廷は、人類としての共通の良心を共有する世界市民を代表し、次のとおり判決を言い渡し、それに基づいて、関心をもつすべての者が、イラクにおける、また国際社会全体における正義と平和の追求のために行動することを促すものである。

? ICTIの意見
 被告人ジョージ・W・ブッシュ、トニー・ブレアー及び小泉純一郎は、2003年3月20日の対イラク攻撃で犯された様々な犯罪の容疑で、2004年7月の公判に提出された起訴状及び同年12月に提出された追記訴状において起訴された。また、追起訴状においては、フィリピン国大統領グロリア・M・アロヨも対イラク攻撃に関連して犯された犯罪の容疑で起訴された。これらの訴因に関して、ICTIは以下の判決を言い渡す。

1 米英両国主導の非軍事的及び軍事的強制措置
(1)侵略の罪
 被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーがそれぞれ米国大統領及び英国首相に就任した後2003年3月20日までに、国連安保理の許可なくイラク上空に飛行禁止区域を設定し空爆を行ったことについて、本法廷は、ICTI規程第2条の侵略の罪[3項(b)他国の領土に対する武力による空爆、または他国の領土に対する兵器使用、(d)武力行使によって他国の陸海空軍または海兵艦隊、航空機隊を攻撃すること]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令した[第7条2項(b)]のであるから、個人としてその犯罪に責任を負う。(訴因2)
(2)ジェノサイド
被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーがそれぞれ米国大統領及び英国首相に就任した後、国連によるイラク経済制裁を終止するために必要な措置をとらなかったことについて、本法廷は、両被告人をICTI規程第3条のジェノサイド(国民的集団の全部または一部を破壊する意図をもって(C)全部または一部の身体的破壊をもたらすことを目的とした生活条件を故意に集団に課すこと)の罪で有罪と認定する。1990年の国連安保理決議661にもとづいて課せられたイラクへの包括的な輸出入禁止措置は本法廷の時間的管轄の発生する1992年2月29日以降も途絶えることなく継続し、これによりイラクの人々に大規模な人的被害がもたらされることになった。とりわけ、空爆により破壊された上下水道など生命維持システムの修復に必要な資材及び医薬品・医療機器等の輸入の禁止がイラク国民に破壊的な損失を生じさせていることが十分に知られていたにもかかわらず、なお制裁措置を是認し続けた事実から、イラク国民の全部または一部を破壊する特別の意図を両被告人が有していたと推認できる。(経済制裁の目的が大量破壊兵器の廃棄にあったとしても、その目的を達成する代償としてイラク国民が破壊され続ける事態を容認したところに、ジェノサイドに不可欠な特別の意図の存在を見て取ることができる。)被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、部下がそのような犯罪行為をまさに犯そうとしていること、もしくはすでに犯したことを知っていたか、又は知るべき理由があったこと、また、そのような犯罪行為を避けるため、もしくはその実行者を処罰するために必要な方策をとらなかった[第7条4項]ことにより、個人としてその犯罪の責任を負う。((訴因1)


2.米英両国軍による対イラク攻撃
(1) 侵略の罪
 2003年3月20日に開始された米英両国軍によるイラク領域への軍事攻撃に関して、本法廷は、それを正当化するために援用されたいかなる理由も、他国に対する先制攻撃を合法化することはできないと考える。自衛権は「武力攻撃が発生した場合」にのみ行使が許されるのであり、実際の武力攻撃が発生する前の仮想上の脅威に対して国家が先制攻撃を行うことを許可する国際法の規則は存在しない。また、安保理決議1441は、イラクに対し、大量破壊兵器(WMD)の査察に関して「その義務違反が継続すれば同国は深刻な結果に直面するであろう」と警告したが、この決議を、加盟国が武力行使を含むあらゆる手段をとることを承認したものと解釈することはできない。イラクにはWMDは存在しなかったという事実は、後に米英両国の専門家による調査で明確に確認され、両国政府によっても認知されている。独裁体制からのイラク国民の解放というもう一つの正当化事由が、WMDの存在という事由と代替的に使われたが、一主権国家の政治体制を他国が武力で転覆することは、到底合法とされえない。こうして、国連安保理決議による授権も、国際法における他の正当な根拠もない対イラク攻撃を遂行したことについて、本法廷は被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーをICTI規程第2条の侵略の罪[2項;3項(a)他国の領土に対する武力による侵攻または攻撃、 (b)他国の領土に対する武力による空爆、または他国の領土に対する兵器使用、(c)武力行使によって他国の港または沿岸を封鎖すること、(d)武力行使によって他国の陸海空軍または海兵艦隊、航空機隊を攻撃すること]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令した[第7条2項(b)]のであるから、個人としてその責任を負う。(訴因3)
(2) 戦争犯罪
 民間人及び民間施設を無差別に標的とし、民間人死傷者と民間施設の破壊をもたらした空爆と他の軍事攻撃に関して、本法廷は、被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーをICTI規程第5条の戦争犯罪[1項(a)故意による殺人、(c)身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起こすこと、(d)軍事的必要性によっては正当化されず、かつ不法に恣意的に実行された財産の大規模な破壊及び徴発;2項(a)一般住民または敵対行為に直接参加していない民間の個人に対して意図して攻撃を加えること、(b)民用物、すなわち軍事目標ではない目的物に対して意図して攻撃を加えること、(d)攻撃が、予期された具体的かつ直接的な軍事的利点に照らして明らかに過剰となる、民間人の生命の損失もしくは負傷または民用物への損害もしくは自然環境に対する長期的重大な損害を付随的に含むことを知りながら、意図して攻撃を加えること、(e)手段のいかんを問わず、無防備かつ軍事目標となっていない都市、村落、居住地または建物に対する攻撃または爆撃]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令した[第7条2項(b)]のであるから、個人として責任を負う。(訴因4a) 
2003年に開始された対イラク攻撃の際に使用されたクラスター爆弾は、人に重大な被害をもたらし、不発弾として残れば地雷として機能しうるが、これの使用につき、本法廷は被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーをICTI規程第5条の戦争犯罪[1項(c)身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起こすこと、;2項(d) 攻撃が、予期された具体的かつ直接的な軍事的利点に照らして明らかに過剰となる、民間人の生命の損失もしくは負傷または民用物への損害もしくは自然環境に対する長期的重大な損害を付随的に含むことを知りながら、意図して攻撃を加えること、(p)過剰な傷害もしくは不必要な苦痛を生じさせる性質を帯び、または武力紛争に関する国際法に違反してそもそも無差別的な性質を帯びた兵器、投擲物および物質ならびに戦闘手段を使用すること。ただし、このような兵器、投擲物および物質ならびに戦闘手段が包括的な禁止の対象となることを要する。]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令し[第7条2項(b)]、又は、自らの軍隊の部下によるそのような行為を避けるための必要な措置をとらなかった[第7条4項]という理由で、個人としてその責任を負う。(訴因5a)
 2003年3月に開始された対イラク攻撃の際に米軍が行った、人体及び胎児に極めて深刻な被害をもたらしかつ、人及び環境に何世代にも渡って長期間有害な影響を与え続ける劣化ウラニウム兵器の使用について、本法廷は被告人ジョージ・W・ブッシュをICTI規程第5条の戦争犯罪[1項(c)身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起こすこと、;2項(d) 攻撃が、予期された具体的かつ直接的な軍事的利点に照らして明らかに過剰となる、民間人の生命の損失もしくは負傷または民用物への損害もしくは自然環境に対する長期的重大な損害を付随的に含むことを知りながら、意図して攻撃を加えること、(p)過剰な傷害もしくは不必要な苦痛を生じさせる性質を帯び、または武力紛争に関する国際法に違反してそもそも無差別的な性質を帯びた兵器、投擲物および物質ならびに戦闘手段を使用すること。ただし、このような兵器、投擲物および物質ならびに戦闘手段が包括的な禁止の対象となることを要する。]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令し[第7条2項(b)]、又は、自らの軍隊の部下によるそのような行為を避けるための必要な措置をとらなかった[第7条4項]という理由で、個人として責任を負う。(訴因5c)
2003年4月2日イラクのクット市における「デイジーカッター」と称される大量破壊兵器、BL−82爆弾の使用に関する訴因5bについては、十分な立証がなされていないと判断し、無罪とする。(訴因5b)
 多数の外国人ジャーナリストが滞在中で放送センターとなっていたバグダッド市内のホテルに対して米軍が空爆を加え、3名のジャーナリストの死亡を含む多数の死傷者をもたらした件に関して、本法廷は被告人ジョージ・W・ブッシュをICTI規程第5条の戦争犯罪[1項(a)故意による殺人、(c)身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起こすこと、;2項(a)一般住民または敵対行為に直接参加していない民間の個人に対して意図して攻撃を加えること、(b)民用物、すなわち軍事目標でない目的物に対して意図して攻撃を加えること、(e)手段の如何を問わず、無防備かつ軍事目標となっていない都市、村落、居住地または建物に対する攻撃または爆撃]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令した[第7条2項(b)]、又は、自らの軍隊の部下によるそのような行為を避けるための必要な措置をとらなかった[第7条4項]という理由で、個人として責任を負う。(訴因4b)
(3)人道に対する罪
 劣化ウラン兵器の使用に関して、本法廷はさらに、被告人ジョージ・W・ブッシュが、武力紛争において民間人を標的として広範囲又は組織的な攻撃の一部として犯された非人道的行為として、人道に対する罪[第4条(i)その他の非人道的な行為]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪実行を命令した[第7条2項(b)]、又は、自らの軍隊の部下によるそのような行為を避けるための必要な措置をとらなかった[第7条4項]という理由で、個人としてその犯罪に責任を負う。

3.イラク軍事占領と占領下に犯された犯罪
(1)侵略の罪
2003年4月12日以降の米英軍によるイラク領土の軍事占領に関して、本法廷は、被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーを、ICTI規程第2条の侵略の罪[2項;3項(a)他国の領土に対する武力による侵攻または攻撃、たとえ一時的なものであっても、当該侵攻から結果として生じた軍事的占領、他国またはその一部の領域の武力行使による併合]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令し[第7条2項(b)]、又は、自らの軍隊の部下によるそのような行為を避けるための必要な措置をとらなかった[第7条4項]という理由で、個人としてその犯罪に責任がある。
 本法廷はまた、2004年7月1日に安保理決議1546に従ってなされた儀礼的なイラクへの「主権委譲」にもかかわらず、多国籍軍は今なおイラクに駐留し、侵略の罪が今この時点にも犯されていることを認めるものである。他国による領土の軍事占領が主権の存在に影響しないということは国際法における確立した原則である。本法廷は、安保理はイラク人民の意思を反映しないイラク暫定政権への「主権委譲」を宣言した決議1546において、自らの権限の範囲を逸脱し、国際法の下で保護されているイラク人民の自決権を実質的に侵害したと考える。安保理決議の形式的有効性にはこれまでほとんど異論が唱えられてこなかったが、安全保障理事会も国連憲章の原則に拘束されるのは自明の理であり、本法廷は、そのような権限を持たない国連安保理によって決定され占領当局と暫定政府の間で実施された「主権委譲」は、イラク人民の自決権の観点から正当性を有さず、その合法性は承認されるべきではないと考える。(訴因6)
(2)戦争犯罪
 米軍によって2004年4月から11月にかけて繰り返し行われたファルージャ市に対する無差別軍事攻撃は、病院などの民間施設を標的にし、おびただしい数の市民を死亡させたが、本法廷はこれにつき、被告人ジョージ・W・ブッシュはICTI法廷規程第5条における戦争犯罪[1項(a)故意による殺人、(c)身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起こすこと、;2項(a)一般住民または敵対行為に直接参加していない民間の個人に対して意図して攻撃を加えること、(b)民用物、すなわち軍事目標でない目的物に対して意図して攻撃を加えること、(e)手段の如何を問わず、無防備かつ軍事目標となっていない都市、村落、居住地または建物に対する攻撃または爆撃、(i)宗教、教育、芸術、科学もしくは慈善の目的に使われる建物、歴史的遺跡、病院ならびに病者および傷者を集合させている場所が、軍事目標ではないのに、これに対して意図して攻撃を加えること]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令し[第7条2項(b)]、又は、自らの軍隊の部下によるそのような行為を避けるための必要な措置をとらなかった[第7条4項]という理由で、個人としてその犯罪の責任を負う。(訴因7−3)
 米軍によって、数ヶ所の捕虜収容所、特にアブ・グレイブ捕虜収容所において実行されたイラク人捕虜に対する拷問と虐待に関して、本法廷は、被告人ジョージ・W・ブッシュをICTI規定第5条[1項(b)拷問ないし非人道的な取り扱い;(c)身体または健康に故意によって深刻な苦痛を引き起こし、または重大な傷害与えること、2項(p)特に屈辱的で侮辱的な取り扱いによって個人の尊厳を侵害すること]の戦争犯罪で有罪であると認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュは、自らの部下がそのような犯罪行為をまさに犯そうとしていること、もしくはすでに犯したことを知っていたか、又は知るべき理由があったこと、また、そのような犯罪行為を避けるため、もしくはその実行者を処罰するために必要な方策をとらなかった[第7条4項]ことによって、個人としてその犯罪に責任を負う。(訴因8−2)
 軍事戦略を目的としたアメリカ軍とイギリス軍によるイラクの歴史的な場所や記念物の破壊に関して、本法廷は、被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーをICTI規程第5条における戦争犯罪[(i)宗教、教育、芸術、科学もしくは慈善の目的に使われる建物、歴史的遺跡、病院ならびに病者および傷者を集合させている場所が、軍事目標ではないのに、これに対して意図して攻撃を加えること]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、最高指揮官としての権限でこれらの犯罪行為の実行を命令し[第7条2項(b)]、又は、自らの軍隊の部下によるそのような行為を避けるための必要な措置をとらなかった[第7条4項]という理由で、個人としてその犯罪の責任を負う。 (訴因9)
(3)人道に対する罪
 米軍によって2004年8月以降にファルージャにおいて文民たる住民に対して行われた広範なまたは組織的な攻撃に関して、本法廷は、被告人ジョージ・W・ブッシュをICTI法廷規程第4条の人道に対する罪[(a)殺人,(b)殲滅)]で有罪と認定する。被告人ジョージ・W・ブッシュは、部下がそのような犯罪行為をまさに犯そうとしていること、もしくはすでに犯したことを知っていたか、又は知るべき理由があったこと、また、そのような犯罪行為を避けるため、もしくはその実行者を処罰するために必要な方策をとらなかった[第7条4項]ことにより、個人としてその犯罪の責任を負う。(訴因7−2)
(4)ジェノサイド
 米軍によって2004年8月以降にファルージャにおいて行われた大規模な攻撃について、本法廷は、被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーをICTI法廷規程第3条のジェノサイド(国民的集団の全部または一部を破壊する意図をもって(a)集団の構成員を殺害すること、(c)集団の全部または一部についてその身体の破壊をもたらすことを意図した集団生活の条件を押し付けること)の罪で有罪と認定する。ファルージャを包囲し、人道援助活動を拒否し、さらに水や電気などのライフラインを遮断したうえでの大規模な軍事攻撃は、ファルージャにとどまる相当数のイラク国民を破壊する特別の意図をもって行われたものと認められる。被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーは、部下がそのような犯罪行為をまさに犯そうとしていること、もしくはすでに犯したことを知っていたか、又は知るべき理由があったこと、また、そのような犯罪行為を避けるため、もしくはその実行者を処罰するために必要な方策をとらなかった[第7条4項]ことにより、個人としてその犯罪に責任を負う。(訴因7−1)


4.小泉純一郎の犯罪
(1)侵略の罪
 連合軍に参加するために自衛隊を派兵したことに関して、本法廷が前述のように認定したとおり、連合軍は不法にイラクを占領し、侵略の罪を犯したのであり、本法廷は被告人小泉純一郎をICTI規程第2条[2項;3項(a)国家の軍隊による他国国家の領域に対する侵略ないし攻撃、または、たとえ一時的なものであったとしても、そのような侵略ないし攻撃から起こったあらゆる軍事占領]により有罪と認定する。被告人小泉純一郎は、被告人ジョージ・W・ブッシュ及びトニー・ブレアーとこれらの犯罪を共に犯した[7条2項(a)]のであり、個人として責任を負う。
 また、海上自衛隊が、2003年2月に軍事攻撃のためにイラクに向かう米軍艦隊と航空母艦に石油を供給するのを許可したことに関して、本法廷は、被告人小泉純一郎を侵略への幇助及び支援の罪で有罪と認定する。被告人小泉純一郎は、ICTI規程第7条2項(c)により、個人として責任を負う。
さらに、連合軍によるイラク占領支配のために約9億ドルの政府開発援助を提供した件について、本法廷は、被告人小泉純一郎を侵略への幇助及び支援の罪で有罪と認定する。被告人小泉純一郎は、ICTI規程第7条2項(c)により、個人としてその犯罪に責任を負う。(訴因10)
(2)戦争犯罪の幇助と支援の罪
 すでに認定したように、米軍はイラクにおいて民間人を攻撃するという戦争犯罪を広範に重ねてきているが、この点に関して、海上自衛隊が軍事攻撃のためにイラクに向かう米軍艦隊と航空母艦に石油を供給するのを許可したこと、連合軍によるイラク占領支配のために約9億ドルの政府開発援助を提供したこと、及びイラクでの軍事活動に従事する米軍部隊のために在日米軍基地を使用させたことについて、本法廷は、被告人小泉純一郎を戦争犯罪幇助及び支援の罪で有罪と認定する。(訴因11)
(3)ファルージャ虐殺の幇助と支援
 被告人小泉純一郎が、在沖米軍基地を2004年4月のファルージャ攻撃のために使用させることにより米軍の戦争犯罪を幇助し又は支援したという訴因に関しては、本法廷は、立証不十分と判断し、無罪とする。(訴因12)
2004年8月以降に行われた大規模なファルージャ攻撃について、本法廷はすでにジェノサイド、人道に対する罪および戦争犯罪の成立を認定しているが、こうした犯罪を実行した米軍の一部が在沖米軍基地から派兵されていくことを知っていたか知りえたにもかかわらず、日米安全保障条約にもとづく「事前協議」を含め、これを阻止するための措置をいっさいとらなかったことにつき、被告人小泉純一郎をこれらの犯罪の幇助の罪により有罪と認定する。上記諸犯罪に対処するために必要な措置をいっさいとらないこともまた、同様に幇助の罪にあたる。(訴因13)


5.グロリア・M・アロヨの犯罪
 2003年3月20日に開始した対イラク攻撃の期間中に、アメリカ軍がフィリピン領空を飛行し、フィリピンの空港と沿岸施設をアメリカ軍の駐留と燃料補給のために使用するのを許可した件に関して、本法廷は、被告人グロリア・M・アロヨをICTI規程第2条の侵略の罪[3項(f)他国が自由に使える自国の領土において、当該他国が第3国に対する侵略行為を犯すため使用することを許す行為]で有罪と認定する。被告人グロリア・M・アロヨは、個人としてその犯罪を犯した[第7条2項(a)]のでり、その犯罪に責任があり責めを負う。(訴因14)
 
? 勧告
1.イラクに駐留する連合軍の全軍撤退とイラク人民の完全な主権回復
 2004年7月に安保理決議にそって「主権委譲」が行われたという事実にもかかわらず、日本の自衛隊を含む連合軍は、今なおイラク各地に駐留している。完全な主権と民族自決権をイラク人民に回復するために、現在イラクに駐留している全ての外国軍は即時撤退するべきである。

2.市民に対する無差別軍事攻撃の終止
 市民の居住地域と施設に対する無差別の攻撃は、直近では2004年11月にファルージャで行われたが、重大な戦争犯罪を構成するものであり、いかなる軍隊も、市民と民間施設を標的とするこのような違法な軍事行動を行ってはならない。

3.犯された全ての犯罪の承認及び真摯な謝罪
 被告人及び各国政府は、本法廷が上記の通り認定した全ての犯罪の違法性を承認し、その犯罪によって被害者となった全ての人に誠実な謝罪を表明すべきである。

4.被害者の救済
犯罪によって損害を被った全ての被害者は、賠償の支払い及びリハビリテーションを含む補償を受ける権利を有する。これに関連して、救済と補償を受ける個人の権利に関して指針となる国際法の原則は、国連人権委員会に提出された、国連特別報告官M・シェリフ・バシオーニの「国際人権法及び人道法の違反の犠牲者が救済及び補償を受ける権利に関する基本原則及びガイドライン」という最終報告書に見出すことができる(E/CN.4/2000/62、付属文書)。救済と補償を提供する際には、ICC規程を含む現在の国際法の水準に従い、ジェンダーの視点を十分に考慮するべきである。

5.実行犯の調査と処罰
 被告人及び各国政府は、人道に対する犯罪を含め全ての犯罪を即時に調査し、全ての責任者を裁き、彼らに適切な処罰を加えるべきである。実行犯を訴追せず処罰しないことは、国家が国際法違反に対する免責を許容しているとみなされ、国家責任を生じうる。

6.兵器に関する調査と人体及び環境に対する影響評価
 対イラク攻撃期間中に使用された兵器、とりわけ劣化ウラン兵器に関して、人体及び環境に対するこうした兵器の科学的調査及び影響評価を緊急に実行しなければならない。このような調査と評価の結果出された全ての情報及び判断は一般に公開されるべきであり、最優先の課題として、被害者及び影響を受けるすべての人々のために活用されるべきである。

7.日米安全保障条約及び沖縄米軍基地の抜本的見直し
 米軍は、日米安全保障条約により「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に日本での基地使用を認められているに過ぎないことを再確認するとともに、憲法9条の観点を踏まえ、同条約の抜本的な見直しをはかり、さらに、沖縄の米軍基地を閉鎖し、米海兵隊を撤退させること。

8.ICC(国際刑事裁判所)規程の締結
 ICCを創設したローマ規程は、このような犯罪行為の実行者を処罰することで大規模な人権侵害や人道法の違反を防止したいという人類の長年の願いの一つの到達点であり、各国政府がまだ批准していない場合には、直ちにICC規程の批准に取りかかるべきである。とりわけ、第2次世界大戦後のニュルンベルグ裁判や東京裁判から始まった主要な戦争犯罪裁判の主要な提唱国の一つであった米国が、今なおICC規程を批准していないことは、矛盾であり不満足な事態である。米国は、日本やフィリピンと同様に、早急にICC規程を批准し、法の支配を基礎とした国際社会を作り上げる努力を支持しなければならない。また、米国兵士に対するICCによる訴追の免責を確保するために、米国の圧力で約90カ国が米国との間に結んでいる二国間協定は、ICC規程の締約国が裁判所に協力する義務に明白に違背するものであり、許されるべきではない。米国は、ICC規程の趣旨及び目的と真っ向から矛盾するそのような協定を締結するように他国に圧力をかけるべきではない。各国はそのような協定締結は慎むべきであり、すでに締結している場合には、そのような条約関係は速やかに終結すべきである。

9.国連体制、特に安全保障理事会の改革と再編
 安全保障理事会の5カ国の常任理事国に拒否権を与えている国連の現行の体制、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略の存在に関する決定はこれら常任理事国の手に握られており、常任理事国によって引き起こされたか又は常任理事国が関係しているそのような状況についての決定は、事実上、原理的に不可能である。これは国連のシステムの根本的な欠陥であり、緊急に改善されるべきである。また、対イラク経済制裁の事例のように、一定の目的をもって採択された安保理決議が、人権保護のような国際法の重要な価値や原則に反することになる事態も起こりうる。このような事実を考慮し、かつ、国連憲章の前文が「われら連合国人民は...」という文言で始まることをも想起しつつ、現行の国連体制、特に安全保障理事会の体制、国際法の適用を公正で真に普遍的なものとし、世界の市民の声を反映させることが可能となるような体制に再編されるべきである。

判事 阿部浩己(判事団長)
申 惠_
イ ジャンヒ 
ジョンソン・パンジャイタン